2015年に国連で採択されたSDGs(エスディージーズ、持続可能な開発目標)は、自然環境問題、貧困・飢餓・不平等やその根底にある差別や暴力など、世界中で直面している17の課題を解決するために立てられた開発目標で、「誰一人取り残さない」ことを理念に掲げています。
 仏教界に於いてもホットな話題で、昨年11月10日の全日本仏教青年会全国大会でもSDGsがテーマとして取り上げられましたhttps://higan.net/now/2018/09/jyba_sdgs/
 SDGsは仏教徒こそ率先して取り組む社会活動であると言えます。
 とは言え、私も含めてまだまだ「SDGsって何?」というところからですので、まずはキックオフイベントして表題のセミナーを開催いたしました。昨年、住職塾でご一緒した松嶋亜紀子さん(浄土真宗僧侶)が立ち上げた「SDGsおてらネットワーク」の共同代表に加えてもらっている関係で、ウチのお寺が会場となり、九州各地からはもとより、遠く関東、関西、四国から、42名の方にご参加をいただきました。

おてらネットワーク代表 松嶋亜紀子さん

 今回のセミナーでは、参加者相互のチェックイン(簡単な自己紹介)の後、未来の住職塾(http://www.oteranomirai.or.jp/juku/regular_course/)塾長の松本紹圭さんから、伝統仏教教団がSDGsに取り組み意義について以下の三点をお話しいただきました。
①各宗派が進める社会運動(例えば天台宗の一隅を照らす、浄土宗のともいき運動な)を、SDGs上に展開することでお互いに競うイメージから協働するイメージへの転換
②社会運動の継続性
各宗派のトップ交代によるブレをなくして、活動をブレない継続性のあるものにする
③世界への発信
宗派、宗教を超えて、あるいは結束を促して世界に仏教とSDGsを発信できる
SDGsは社会運動について、仏教徒、仏教各宗派に行動基準、推進力を与える

松本紹圭さん

 次に、国連ハビタット本部長補佐官の星野幸代さんから、主に災害や戦争後に住民主体の復興を行うpeple’s processについての概説と現場での取り組みについてご講話いただきました。
(a)国連ハビタットはSDGsの目標11 持続可能なまちづくり にコミットしている。
(b)SDGsとMDGsの違いは、考えている範囲が「地球規模」か、「国単位」かであり、MDGsの(不)成果を考えると、すべてが地球規模で考えなくてはならない。
(c)災害からの復興時の住民希望の最優先の一つに「お寺」の復興がある。
国連としては宗教の問題であり資金的な援助はできないが、計画援助をしてきている。
(d)まちづくり(#11)は、上下水道インフラと貧困(#1)、医療施設と健康(#3)、校舎と教育(#4)などと関連している。

 その後、講師お二人のクロストークの予定でしたが、ここまでに時間が押してしまい、想定通りのディスカッションが十分に出来なかったのが悔やまれますが、参加者との質問応答もできました。

星野幸代さん

続いて、株式会社YOUI代表取締役社長の原口唯さんにファシリテーターを勤めていただき、SDGsの世界観を疑似体験できるカードゲームを行いました。原口さんは2030SDGsカードゲーム公認ファシリテーターです。わかりやすくルールの説明と進行をしていただいたおかげで、会場内は活発にコミュニケーションが行われ、個人の楽しみや自己実現を大切にしつつ、世界全体の動向に目を向けて、そこに貢献的に動くという考え方を体験しました。

原口唯さん

 具体的にSDGsに達成に向かって今後、お寺がどのように取り組むかは、まだまだ手探り状態ではありますが、こうして理念と思いを共有する輪を広げていくことがまずは大事だと実感した一日でした。自坊のご信者のことは第一ではありますが、それと共に地域社会、あるいは地球規模での視点と感心を持ちながら貢献していく道を、今後も探っていきたいと思います。