【8/30 養老指南塾開催】
現役の看護師であり真言宗の僧侶でもある 玉置妙憂 さんをお招きして養老指南塾を開催しました。
玉置さんは全国の寺院(宗派を問わず)での養老指南塾を通じて、自分も含め身近な人の老・病・死を迎えるために大切な心構えや基本的な考え方を伝えておられます。今回は、他寺院も含めた当宗の信徒、他宗派の僧侶方、一般参加者、当山の教務(僧侶)あわせて53名が参加。大変学びの多い講座となりました。
テーマは大きく分けて「時間軸で見る死」と「終末期医療とスピリチュアルケア」の二つ。
「時間軸で見る死」
・死とはなにか
・あなたにとって死とはどういうものですか?
・体に起こる死の兆候
・心に起こる死の兆候
死の3ヶ月前から死後までを時系列に沿って解説。
現役の看護師としての視点で、これまでご自身が経験された事例をたくさん紹介していただきました。
こうしたことを事前に知っておけばイザというときも慌てずにすむと思います。
「終末期医療とスピリチュアルケア」
後半は死にゆく人の心に寄り添うことについてグッと踏み込んだ内容で、現代の終末期医療ができることと、そのメリット・デメリット、選択肢が増えることは生と死の境界が多様化することなどについて講義していただきました。
一人称、二人称、三人称の死、主体が変われば死生観も相対的に変わること。生きているうちに家族で一緒に考えたり、信頼できる人(お坊さんをはじめとした)と相談してみること。医療と宗教の棲み分け。台湾の臨床宗教師の取り組みなど。
全部のお話が興味深く、あっという間の4時間でした。
その中でも特に印象に残ったお話を一つだけ。
ある末期がんの女性。
二人いた娘さんたちの希望もあって抗がん剤治療を受け、
心身ともにツラい思いをされていた。
しかしながら、医療でできることには限界があり、
それでも0.01%の確率で効く抗がん剤があると知り、
娘たちは医者に投与を希望したとのこと。
それを聞いた玉置さん(当時はお坊さんになる前)は
「一体、誰のための治療なのか?これ以上お母さんを苦しめないで」
と叱責して治療を思いとどまらせようと思い、
そのことを患者である母親に先に伝えたところ、
本人はなんと治療を受けるという。
曰く「これが、娘たちにしてあげる最後のプレゼントです」と。
これはすでに「抗がん剤が効くか効かないか?」という問題ではなく、誰の気持ちを大切にするかということ。
医療の範疇を越えた現場の問題をどう解決していくのか。
我々、宗教者の責任を改めて感じ、身が引き締まる思いです。